五感で味わう魚の旨味


●その理由は「五感」にあると考えています。味を感じるのは舌だけではありません。和食には昔から「目で食べる」という言葉があります。その意は「器」や「飾り付け」にあるのでしょうが、目だけではなく、人が持っている「五感」すべてで感じる旨さがあります。釣った魚を〆、「命、いただきます」と捌き、涎をこらえて調理する。釣る時に感じるもの、〆る時に感じるもの、捌くときに感じるもの、調理する時に感じるもの、そして、料理の一品として食するときに感じるもの。それらは全てつながっています。そして、時には涙するような美味しさに出会ったりします。実際、オニカサゴを初めて釣った釣り師が、その美味しさに涙した、と言う話を南房総の某船長から聞いたことがあります。それは五感すべてに訴える「感動」という旨さなのだと思います。
●北大路魯山人が、出された料理に対して「あー、美味しい」とだけ言って食する客に「言えるのはそれだけでっか。もっと言葉を尽くしなはれ! 美味しさをもっと言葉で語りなはれ!」とたしなめた話(実際の言い方は違っているかもしれませんがそんな言葉だったと記憶しています)がありますが、その真意は、人が持っている五感を総動員して、それを言葉を以って素材、調理、美味しさに対する感動として表現できる筈、と言う事だと思っています。
●海の中から抜き上げた「海の作品である旨み」を食する幸せ。人が感じる「美味しさ」とは、そうした五感に至る「幸せ」であると思います。釣り師の独りよがりのように聞こえるかもしれませんが、昨今の「骨なし魚」や「ファスト・フィッシュ(すぐ食べられるよう加工された魚)」に物申したいという気持ちがあります。否定はしません。が、人は魚の小骨を避けながら食べられる器用な口を持っているのに。骨の周辺は美味しい所なのです。釣り上げて指で捌き、口に入れたイワシの何と美味いことか。そこから離れてしまうのは、誠に惜しいことだと思います。
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